昨年6月から施設で暮らしているオットの両親。月に2~3回ペースで面会に行っていますが、4月以降、アポなし訪問は厳禁、1回の面会時間も20分程度と決められています。

家族でさえ居室に出入りすること禁止、食べ物の差し入れ禁止、検温・手洗いうがい・マスク着用はマスト… 諾なるかな、です。
そんなある日 施設の方から、ワタクシたちに呼び出しがありました。

母は、アクティブ過ぎる言動で 日々の小ネタに事欠かない人気者(爆)らしいのですが、急に変調をきたしているとーーー
入所前からの持病や高齢者特有の不具合は、投薬を含め常駐の看護士さんと提携医の定期往診でケアして下さっているのですが、精密検査や専門医の診察が必要な場合(救急搬送を除き)、外の病院を受診する際は家族が連れて行きます。

病院への送迎は、施設が介護車両を出してくれます。
総合病院というのは…、紹介状と予約があっても、待たされます。母は体力がある方ですが、受付後すでに1時間半待っています、90歳でも。

「いつ頃から痛みますか?」「以前にもこんな症状はありましたか?」本人に訊いても、『今』のことしか答えられません。認知症なので。
症状の説明を受け、特に手当をすることはなく、次回の予約(1か月後)をして、1回めの診察終了。その間15分ほど。
会計を済ませ、帰りました。処方箋に基づき、施設で薬を手配してもらいます。
・・・・・
3週間ほどして施設から連絡がありました。症状が改善されていないので、次の予約を待たずに再受診した方が良いと。
再診の予約を前倒ししてもらい、行きました。
先に血液検査をし、11時の予約を待ちます。呼ばれたのは12時近く。
前回に比べ危急性が察知されたのか、精密検査に。

造影剤を射ち、血管のCT撮影。
続いて、皮膚と血管の酸素レベルを測定する検査:センサーを装着したまま30分近くジッとしてなくてはなりません。「これ何やってるの?」「何のためなの?」「もう帰りたい」…そりゃそうなるよね。。。
結果、数値は良くありません、それもかなり。CTでは、血栓も見つかりました。
検査が終わって呼ばれるまでさらに2時間。

「外科的処置をしますか?1週間ほど入院になります。しばらく安静が必要なので認知症の方は身体拘束をせざるを得ません」「コロナ禍下では、家族の付き添いは無理ですよね?」「ダメです、身体拘束です」「この手術をしたら、もう2度と、せめてしばらくは同じような疾患は起きないのでしょうか?」「いえ、いつまた別の個所に飛ぶかは わかりません」
もちろん、担当医とて こんなに紋切型な言い回しではなかったし、"本人の意志"を引き出せない患者一人に多くの時間を費やすわけにいかないでしょう。
が、「ご家族の判断で」を畳みかけられるのはキツかった。
この日は、連れて帰りました。

朝9時半に病院入りして、会計が済んだのは16時半。
体調のすぐれない90歳の母には、それだけで十分過酷な1日だったはず。

今まで入院も手術もしたことがない母の体にメスを入れること、何日も身体拘束されること、それを受け入れたとしても完治とは程遠いこと。
私たちだけで即答するには重すぎる決断。
とにかく、半世紀以上連れ添ってきた父に話をしなくてはなりません。
ここ数年~施設に入ってからも、明らかに母の方が元気そうだったので、父の驚きと落胆ぶりは計り知れず。

ラウンジにはクリスマスのディスプレイ。
母は つい先月まで毎日、自慢の俊足で施設中を移動し、ピアノの横を通りかかるとソナタの10番(唯一暗譜している曲)を弾き、いつも同じところで間違えては風のように去っていっていたそうです。

外科手術は見送りました。ソナタの10番も、疾走する足音も聞こえなくなりましたが、施設内で父と静かに過ごしています。